静電粉体塗装は塗料の粒子に塗装ガンで強制的に帯電させ、被塗物に電気的に付着させる塗装です。その後この粒子は焼付け炉の中で温度を付与されることによって溶融状態となり、固化して塗膜を形成します。
街路灯、ガードレールなどの屋外製品に広く採用されている、コーティング方法です。
1回の塗装膜厚は溶剤塗装が10~30μmなのに対し、粉体塗装では40~200μmの膜厚が可能で、粉体塗装による完成塗膜は、塗料に使用される樹脂の特性により、高膜厚で優れた塗膜強度、耐食性、耐候性、耐化学薬品性を有しています。
粉体塗装は有機溶剤を全く使用しないため、大気汚染防止に役立つとともに安全な職場環境の形成に有効です。
粉体塗装は有機溶剤を全く使用していないため、塗料の揮発成分がありません。また、塗料の形態が粉末であることから、塗料の回収再利用が容易なため省資源に有効です。
近年、環境に対する関心が高まって来ており、環境関係に対する法整備の動きが活発化しております。
特に、VOC規制に関して大気汚染防止法の改正として法案化される見通しになって来ております。VOC規制が具体的になってきた環境下では、塗装は水系塗料、粉体塗料、ハイソリッド塗料のいづれかの方向に向わざるを得なくなって来ております。特に粉体塗装はVOCの排出量が最も少ない塗装として今後その用途を大きく拡大していくと考えられる塗装方法のひとつです。
現在では、塗装装置の開発と共に粉体塗料の開発が進み、耐食性や耐候性の向上だけでなく美粧性に優れた種々の塗料も開発されており、これらの塗装品はファッション性のある美しい商品として市場に受け入れられていくでしょう。
VOCとは英語のVolatile Organic Compounds=揮発性有機物質の事で、シンナーや溶剤型の塗料に含まれるトルエンやキシレン等の化学物質の事です。このVOCは、オゾン層の破壊、光化学スモッグや浮遊粒子状物質の発生原因、近年問題になっているアレルギー症の一種であるアトピーやシックハウス症候群の原因の一つと言われています。一方で、現在までの塗装の主流は溶剤型で、溶剤型の塗料は塗装時にVOCを大気中に排出する事から地球環境への負荷や人体への影響はかなり以前から指摘されていました。
欧米では数十年前よりVOCの地球環境と人体に対する害が認識され、VOCの排出を削減する為の規制や自主努力が早くから取られてきました。最初の規制は1966年にアメリカのカリフォルニア州で制定された「ロスアンジェルス66」で、主として光化学スモッグの発生原因となる有機溶剤の規制が行われました。以降、欧米のほとんどの工業先進国で何らかのVOC規制が行われ、その規制は今後も厳しくなってゆくものと考えられています。
日本では2001年4月よりPRTR法が施行され、特定化学物質の使用量の届出義務が全ての製造業に課せられる事になりました。PRTR法で指定されている化学物質は発ガン性物質のダイオキシンを始め、人体や地球環境に有害とされている354種類となっていますが、この中にはトルエン、キシレン等、従来型の塗装に使用されている多くの揮発性有機物質が含まれています。
PRTR法は移動量及び排出量の届出を義務付けたもので、使用量や排出量を規制するものではありません。大気中の光化学スモッグや粒子状物質の低下が達成できておらず、さまざまな環境に対する問題が報告される状態から、今後VOCの排出量規制が法案化される見込みになってきました。